2021年6月、千葉県八街市で発生した重大事故が、アルコールチェック義務化の大きな契機となりました。飲酒運転をしていたトラックが小学生の列に突っ込み、5人が死傷するという痛ましい事件です。
この事故を受け、政府は飲酒運転撲滅に向けて動き出し、運転業務に携わるドライバーへのアルコールチェック義務を法令で明確化しました。
これまでは「緑ナンバー」の業務用車両が対象でしたが、2022年4月より一定条件を満たす「白ナンバー」車両の使用者にも対象が拡大されています。
さらに、直近では日本郵便の不適切な点呼問題も社会的に大きな波紋を呼んでいます。
2025年6月、国土交通省は、日本郵便が全国の郵便局の約75%にあたる2,391か所で、飲酒の有無などを確認する点呼を適切に実施していなかったことを受けて、運送事業の許可取り消し処分を行う方針を通知しました。これにより、同社が運行していたトラック・バンタイプの車両およそ2,500台が配送に使用できなくなる見込みです。
点呼を実施せず、虚偽の記録を作成していたことも監査で明らかになっており、運送業界全体に緊張が走っています。このような事件や処分事例を踏まえ、アルコールチェックの厳格な実施がいかに重要であるかが再認識されている状況です。
対象となる事業者と条件
アルコールチェック義務化の対象となるのは、以下のような要件を満たす事業者です。
- 白ナンバーの業務用車両を5台以上保有している事業者
- 定員11人以上の白ナンバー車両を1台以上保有している事業者
- 原付・バイクは0.5台として換算
これらの事業者は、道路交通法の規定により「安全運転管理者」の選任が義務付けられ、運転前後にドライバーの酒気帯びの有無を確認する必要があります。
さらに、確認内容を記録し、1年間保存しなければなりません。対象事業者でありながらアルコールチェックを実施していない場合、道路交通法違反とみなされ、罰則が科される可能性もあります。
運送業として求められる対応
運送業は、日々多くの車両を管理・運行しており、今回の義務化によって特に高い水準での管理体制が求められるようになりました。具体的には、以下のような対応が必要です。
- アルコール検知器の導入
国家公安委員会が定める機器を用いて、毎日出発前・帰社後に酒気帯びの有無を確認。
- アルコールチェックの記録と保管
誰が・いつ・どのように検査を実施したかの記録を残し、1年間保存。
- 安全運転管理者の配置
各営業所ごとに管理者を選任し、確認業務や記録管理を徹底。
- 社員への教育・研修
飲酒運転のリスクや法令の内容を社員に周知し、定期的に研修を実施。
これらを怠ると、法的責任だけでなく、企業の社会的信用も大きく損なわれる恐れがあります。
実務で直面する課題と工夫
アルコールチェック義務化の対応を進める中で、現場からはさまざまな声が上がっています。以下はよくある課題と、企業側の対応例です。
- 直行直帰が多い社員の対応
出社せずに現場へ直行する営業職やドライバーについては、自宅や現地でチェックを行い、スマホで記録・報告する方法が一般的になっています。
- 検知器の保守・管理
アルコール検知器の故障・未校正により、正しい数値が測定できないことも。そのため、定期的な点検や交換のルール化が求められています。
- 記録業務の煩雑さ
紙の日報やエクセルで記録している企業では、保管や検索に手間がかかり、人的ミスのリスクも増加しています。
こうした課題に対応するため、多くの企業ではITツールやクラウドシステムの導入が進んでいます。
ODIN動態管理でお役に立てること
ODINの特徴は次の通りです。
- 日報にアルコールチェックの有無を記録
日報の入力時に併せて「アルコールチェックを実施したか」「結果はどうだったか」を、任意項目の追加によって簡単に選択・入力できるようにすることが可能です。
- アルコール数値の記録も可能
アルコール検知器の数値をそのまま日報に入力し、クラウド上に保存することができます。
- アルコールチェック写真の保存機能
必要に応じて、チェック中の様子をスマートフォンで撮影し、その画像を日報とセットで保存可能。遠隔地勤務や直行直帰にも対応できます。
- 記録の一元管理・検索機能
クラウド上で全社員のアルコールチェック履歴を管理できるため、監査や行政からの指摘にもスムーズに対応可能です。
- モバイル・PC両対応
スマートフォンでもPCでも操作可能なため、現場でも事務所でも同じように使えます。
アルコールチェック義務化は、運送業にとって業務負担となる一方で、安全運転の確保と社会的責任を果たす上で欠かせない取り組みです。